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2012年2月26日日曜日

放射性物質汚染について〜関西の農家が今考えるべきこと


僕の仲間には農家が多いです。

毎年厳冬の農閑期に皆であつまって一晩酒を飲んで語り合う会があるのですが、毎年ユニークなゲストをお招きして勉強会もその時やっています。

今年は岐阜の山間地で米農家をされつつ、昨年の原発事故以後に自ら資格を取って放射能測定所を立ち上げてしまったという、農事組合福地ハイランズ代表、山田正隆さんをゲストにお招きしました。



以下、聞き取りながら起こしたメモを、ご本人の同意を得て再構成したものです。文中の太字や着色は僕によるものです。発言された内容自体は山田さんのものでありますが、ここに記載した内容に関して、聞き違いや誤解による間違いが無いとは言えません。その点をお含みおきいただき…以下。


山田正隆さんご自身について

以前はやっていましたが合鴨農法はやめました。合鴨は鳥インフルエンザウイルスの宿主なので非常に危険です。問題が稲作を遥かに超えたところにあります。
でも鳥インフル問題を排除すれば十分実用です。今合鴨農法をやっている人は鳥インフルエンザの危険性や影響を知っていて確信犯的にやっているのか、知らないのかのどちらかだと思います。
リスク思考をとれば、今はやるべきではないです。鳥インフルエンザ問題がなければとても楽しく可能性のある農法なのですけど。
僕はまた農業におけるリスク思考から鳥インフルエンザと同様に原発問題を考えています。
18年前から稲作農家をはじめて、やっと2年前から無借金経営になりました。仕事のお米のことと女の人は嫁さんにしか興味ありません(笑)。
お米に携わる以上、お米のことは何でも知りたいとここ10年ほど稲作の発祥地中国雲南省まで行って農作業をしています。
他にもタイやビルマやインドネシア、フィリピン、台湾などに農村を訪ねて農作業をしてきました。
例えばバリという地名の語源には「お米」という意味もあります。今でも非常に多くの品種を作っていて勉強になります。
でもどこに行っても国籍問わず農作業の手際はほとんど同じなのには驚かされます。
ただしバリは非常に観光されている狭い島なので外国人がお金に見えるらしい。お水飲んだだけでおかねとられました(笑)。
馬を一頭飼っています。道産子(使役用)です。合鴨と馬や牛や羊にウサギなどを組み合わせて農地の草刈りを自動的にしてもらう農法(ブレーメンプロジェクトと名付け)を考えましたが合鴨と鳥インフルエンザ問題であえなく計画倒れに終わりました。その後「見せる農業」も大事と馬を飼いました。
馬は牛より飼いやすいですよ。気を使わなくてもいい。うちの馬は肉にされる寸前を10万円で買ったものです。
たった一頭ですが馬がいれば観光や乗馬、農業イベントとも絡めいろんなことが広がります。

"半農半X"でない生き方

僕は「半農半X」って考えは好きじゃないです。「半半」や「X」という言葉も思考回路ももったいないと感じてしまいます。とくに条件のよくない土地なら懸命に農はやらないと生活できません。
僕は海外でも稲作したいと思ってます。どんなことをするにもお米を中心に展開を考えています。
加工品にもできる。大学とも連携。そして馬がいるから観光、乗馬クラブ、子どもたちが集まります。(そして)お米のパケージデザインを考えようとなったら、農家に限らず他業種の人を集めてプロを招いてデザイン塾を開きました。海外展開を考えたりトラクターパレードも外国語を習うのも私にとっては全てお米つくりなんです。
農家のおにぎり屋やりたいです。酒米から酒造会社、酒販店、立ち飲み屋まで一年全部をつなげたイベント「お酒の一生プロジェクト」もやってます。
つなげたところで知らない同士の人たちの交流が生まれます。今は農業者側が先頭に立って企画や提案をしていくポジションだと考えています。
なぜなら硬直化している業種は多いのですが意識ある農家なら遥かに自由な発想で市場を作り出すことができます。
農業者は毎日気候天候、条件が異なる自然の中で仕事をします。
他業種と比べても農業は「最たる環境適応職」だと思います。
農業者は環境適応の訓練を毎日しているのですから、この能力を活かさない手はありません。

僕は米を中心に何でも米とつなげます。
どんなことをやっても軸足はお米、「半農半X」ではなくてお米にすべてをつなげて飲み込んでしまう。自分の中心軸に全部引きこんで全部血肉にしていきます。これには努力は必要ありません。発想や視点をちょっと変えるのに「う~ん」と悩むことはないのです。ちょっと違う視点から見てみる、それを毎日繰り返すだけです。
するとお米を中心に何とでもつながれる思考回路も行動力もできてきます。「半*半*」という発想はもったいない。しっかり自分の中での軸足を決めて、決めたらその軸足から何にでもつなげていく考えや行動の方が楽しいし迷いも起きません。

だから僕が仮に大工さんのところに行って、何かを教わったとしても、それもお米につなげちゃう、米作りの一部にしてしまう。お酒を呑みに出かけるのもなんだってかんだってお米つくりにつなげちゃう。軸足を決めることで何の世界ともつながれる、そんな楽しい世界が広がっていきます。

放射能測定センター

実は3/11の震災後、当初は放射能測定をやろうとは思っていませんでした。
地震の後、思い返せば横浜の友人から「おい!P3C(哨戒機)がひっきりなしに飛んでるぞ!」と言われたことがきっかけでしたました。
なんだろうと思ったら地震や津波以外に極めて深刻なことが起こっていた…原発の事故です。
そして、原発事故が起きるまで、薄々危なそうだと思っていながら、僕は本当に何もしてこなかったと強烈に反省しました。
「自分にも原発事故の責任はある」
なぜ、測定をやるようになったか。原発が事故を起こしたことで、農家から、生活の安全を懸念する人たちから、高額の測定料を取る測定会社が儲けるというおかしな現象が起きました。
何よりも自分のお米や農地が心配でしたが、測定会社にお願いするのではなくて農民自身が測定できれば一番いい。自分で調べて測定器の機種を調べ、自分のお米や農地の線量を測ることを考えました。
関西の人は自分の目から見て福島から遠い分だけ放射能に対する意識が薄いと思います。
どの地域まで放射能汚染されていますか?と聞かれたらこんな風に感じている人が多いと思います。海外から見たら日本全部が汚染されているイメージです。沖縄から見たら本土全部が汚染されてて、そこで止まっている。
九州(四国)から見たら本州で汚染は止まっている。西日本人たちは東日本まで、東京の人たちは茨城まで、茨城の人たちは福島で放射能汚染は止まっている。じゃ、福島の人たちはというとあの町や地域まで、その町の人たちはあの地区までが高汚染されていると言います。みんな誰しも自分の住んでいるところは大丈夫だと思いたいのです。
実際にはどこからどこまで汚染されているのでしょうか?
確かに放射能汚染値に高低はありますが、汚染という意味においては残念ながら日本全土です。
うちの場合、なるべく農家や一般家庭の方にご負担をかけないよう一検体の測定料金を5250円に抑えました。
それでも、農家自身が放射能測定しますと言っても信用性が低ければ意味がありません。
最初は何の知識もないところからスタートして放射線取扱主任者と穀物検定協会の穀物検定員の資格を取り、放射能関連の本を何十冊も読み漁って勉強しました。
放射能測定をするにあたり、この二つの資格だけで50万円かかり、測定器に300万、測定室の改造その他で合計400万の初期投資がかかりました。
検体費用だけでは元を取ることができない可能性が大きいのですが、東北の農家のことを思えば多少のリスクを自分も負おうと考えています。
また、これまでの無知無意識、そして原発事故を起こしてしまったのは自分にも責任があります。放射能測定はそういう意味では私なりのせめてもの償いです。
測定器を導入する前から自分の農地の放射能を測ってみて、もし高い値が出たら農家をやめようと覚悟していました。
農家が汚染された土壌で作物を作ってお客さんからお金をいただくわけにはいきません。ダメだったら農家をやめて、全国をめぐって土や作物の放射能を測る仕事に切り替えることまで考えました。
祈るような気持ちで土の放射能(線量)を測りました。結果はありがたいことに非常に低い数値でした。低い数値はほぼ日本全国と言える範囲から検出されています。

農家のための放射線知識

放射能について語るときに、次の3つこのとは覚えておいてください。 
ベクレル(Bq)
  • 一秒間にいくつ放射線が出ているか。たいていキログラムあたり。人体のベクレル数、カリウム同位体、4000~6000 Bq、炭素同位体2000Bq…全部合計すると7000Bq位。人体からも出ていることを覚えておいてください。
ND(検出せず)の意味
  • この表示は間違ってはいませんが不正確です。厚生労働省は10月からND表示をやめています。農水省はまだ一部利用しているようです。
  • 測定の世界ではよく耳にする検出限界値の他に定量限界値というものがあります。平たく言えば測定機が放射能の「有無」を感知できる限界が検出限界値です。それに対して測定機が放射能に反応して、かつ信頼できる範囲の数値が定量限界値(下限)と言います。機械が反応するのと値を割り出せるのとの違いです。うちの機械だと検体や測定時間にもよりますが検出限界は4Bqとか8Bq辺りになります。条件良ければ2Bqくらいまで測定できます。測定機の性能によっては200Bqが検出限界値だとすると199Bqまでは不検出になります。ですから、厚生労働省はND(不検出)表示をやめ上記の場合なら「>199」と表示するように変更したわけです。
  • さて数字の捉え方です。放射能、または測定された数値に関して安全派危険派の捉え方や主張は見事にばらばらです。たぶん、誰も本当のことはわからないです。人体への影響も急性症状から晩発性症状まで多岐にわたります。値が低いから安全、とは言えないのです。誰も正確には描けないですから、危険な方に舵をとるのは当然のことです。安全と思っていて危険だったでは笑えないですから。
  • ただ外部被曝については、台湾でコバルト60が混じった鉄骨を利用した住宅に住んで寿命が伸びたという話があったり、宇宙線を強く受ける航空機パイロットが、ガンになる有意性はないと言われています。
  • また、世界のなかには日本の数倍の天然線量のあるところでガンの発症率が低いところもあります。統計的なものかもしれませんが、とにかく正確なことがわからないからいろんな主張があるわけです。
  • より危ないと思われるのは内部被曝です。特に呼気経由。食物はまだ塊ですから防ぎかたもあります。水ならしばらく飲まなくてもいい、食べ物も同じ。でも空気は?1分と我慢できないでしょそれを生きている限り24時間取らなくては生きていけない。空気に含まれるもの。微量でも確実に身体に取り込まれ、食べ物や水に比べてはるかに体外に排出されにくいのです。
移行係数
  • 土壌から作物への汚染の進み方を表す数値を移行係数といいます。例えば米で10Bq/kgの値が出たとしたら、土地はもっと汚染されています。作物で出たらもっと土地は汚染されているんです。
  • うちで測定した農作物の検体の場合は当初の予想より放射能数値は出なかったですね。産地は伏せさせてください。
  • 農地からは高い放射能数値が出てもジャガイモからは反応なし、葉物もお米も予想していたのに比べれば反応は少ない。
  • 実測してかなりの確率で反応するのは椎茸と農地です。椎茸からは実際に売られているものからもすごい数値が出ることがありました。農地の汚染は低い数値ながらも四国九州からも出ます
  • 野生動物はイノシシが危ないです。そして魚が徐々に上がり始めています。
  • 魚は内臓が高いのでイカの塩辛などからははっきり反応がありました。
  • さて椎茸やイノシシがなぜ汚染度高いか、ですが菌類は菌糸が長いので栄養を広い範囲の土壌から集めてきます。どういう訳だか菌床栽培でも出るんです。だから土からだけではなく空気中からも吸っているのではないかと予想されます。
  • イノシシは行動範囲が広くきのこや木の実が好きだから蓄積しやすい
  • ですね。関西でもよそごとではないと思います。
  • EM菌で農地除染という話も聞きました。で、福島県の汚染地域の土で菌で除染すれば数値は下がるかどうかを東北の農家さんと協力して試してみました。確かに短期的には効果がありました。でも一度下がったけれど、しばらく経つとどうしたわけかまた数値が上がってしまいました
  • 放射能は土の細かい構造の中に取り込まれている
  • んですよね。時間が経てばたつほど上っ面を除染してもダメです。EM菌を使った除染を試してみて5回計測しました。でもはっきりした効果は見られませんでした。
放射能について

なぜ放射線が出るのかの理由を知っておきましょう。
綱渡りのたとえ。綱渡りをしているのは放射性物質の原子です。
時々綱から落ちます。そのときの叫び声とかちびった小便が放射線です。
下の綱に引っかかって、別な元素になります。
アクチニウム系は12の遷移段階を経てようやく安定します。
実は食べ物より呼気が危ないと思います。食物は排出されますが、肺に入ったものは非常に排出されにくいのです。
特にα線源。プルトニウムとか。α線の正体はヘリウムの原子核です。α線は飛ばないのです。
つまり放射線が外に出ない。だから体内にあるα線源はあるのかないのか、取り込んでしまったのかどうかわからないのです。
福島県や東京のホットスポット、外部被曝は思ったより影響はないのではという議論もあります。
ただ、食べ物、そして空気に含まれる微粒子は今後もっと危険性を明らかにすべきです。空気は常に必要です。食べ物より空気。子どもにも深刻です。測れるもの、数値が出せるものにはまだ対応することができますが、放射能には残念ながら測れないものもたくさん存在します。
測定を毎日のようにしていると実は測れない放射能がたくさんあって、対応できないものがたくさんあるということに気が付いてきます。そこに本当の怖さがあります。
高濃度汚染地区を再生しようとしている知人がいるのですけれど僕はお断りしています。
若い人達が行くのも反対しています。それは測れないα線のせいです。
存在している量も、その影響もわからないからです。
空間線量が高いのはなぜ?だいたいγ線。
未だに線量高い地域があるのはなぜ?と考えると、土壌の放射性物質の崩壊によって、となります。

これからは一つの生き方しかできない、というのは危険です。
他のところに行っても、別なことで食べられるようになっておかないと生活にかかるリスクがつねにあります。だから身の回りの人を守るためにも、一つの立場でも複数の視点が必要なのではないでしょうか。

質疑

Q.身体の中の放射性物質は測れないのか、食品で排出できないのか。
A.WBC(ホールボディカウンター)の結果は目下不正確なところが多いですね。計測のためには測定環境をかなり整備しないといけないです。排出は諸説あってわからないです。ただ汚染された場所の玄米は糠の部分に放射性物質沢山含んでいます。仮に玄米に排出効果があったとしてもその作用だけでカバーできるかどうか疑問です。

Q.汚染作物との距離のとり方
A.作物の汚染度合いを公表すればいいのかどうか?今の現実は微量でも出たら農業は吹き飛びます。
単独の農家だけではなくて、地域を巻き込みます。本当に微妙な問題です。
検査したとしても、同じ地域の生産者の立場を考えて詳細な報告はしないようになってきていますね。
残念ながら私は高い数値をいくつも見てきてしまいました。自分からシイタケやイノシシは僕はあえて食べたいとは思えなくなってしまいました。食品の産地によらず、これまでも産地偽装がありました。とにかく測るしかないです。
不安ならとにかく一度測れ、です。そして産地や資材の由来を考えることです。
たとえば椎茸のほだ木は本来1年以上かかる。汚染地域から菌を植えたものが全国に出たんじゃないでしょうか。最終産地では考えないことです。生産資材の由来を考えます。福島は全国のホダ木の80%以上のシェアがありました。最終産地ではそれが見えません。

Q.測定始めた頃といまと比べてどうなったか、下がったか上がったか。
A.Cs134は半減期2年。減ってきています、Cs137は半減期30年。これからです。全体的には下がっていくでしょうが、蓄積や循環も局所的には起こります

Q.東北からくる堆肥の汚染はどうか?
A.堆肥や腐葉土ですね。非常に高い数値が出ることがあります。育苗土も信頼がおけるところから買うことをお勧めします。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

EM菌を使った除染を試された件について、詳しくお話を伺いたいと思います。
よろしければ、メールアドレス katasekumiko@yahoo.co.jp にご連絡下さい。

片瀬久美子

gmax さんのコメント...

片瀬久美子さん

僕自身がEM除染の現場にかかわったわけではありませんので、もし当該ブログエントリの内容にご関心がおありならば、直接問い合わせされるのがいいと思います。

匿名 さんのコメント...

農事組合福地ハイランズ代表、山田正隆さんに問い合わせるといいのですね。ありがとうございます。

片瀬